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【掛け算を長方形の面積と考えろ】つるかめ算の教え方

初めに

 筆者は、20代だった30年前、ある学習塾で6年間受験算数を教えてきました。その過去に教えてきた経験から、今回は中学受験を目指す子供を持つ親に向けて送るつるかめ算の教え方のヒントを紹介します

 

 つるかめ算は、数学を習うと完全に必要がなくなる考え方のため、我々大人が日常生活で使うことがない算数独特のものと考えがちです。

 しかし、A×Bの掛け算の積み重ねを図形の形で表現することは、普段あまり意識していないだけで、世の中にはたくさんあります。例えば、家庭で消費する電力は、消費電力(W)×時間(h)=電力量、で計算されます。1日の電力量であれば、この積分値になるわけです。

 つるかめ算は、靴の形をした図形の問題ではありません掛け算で算出できる計算を長方形の面積に置き換える考え方の最初の一歩と考えると、どう教えたらいいのかが見えてきます。

 

 

つるかめ算の教え方

算数共通の解き方

 数学と算数で大きく違うのは、数式だけで学習を進める数学に対して、算数は理解の補助に「絵」をたくさん描くところにあります。どのような算数の問題であっても、親である読者の皆さんは、下の順番で解く習慣を子供に付けるようにしましょう。

  1. 絵を描く
  2. 式を書く
  3. 答えを出す

 

NGな教え方

 いきなり靴の形から始めてしまうのだけはやめましょう。いきなり靴の形から始めると、以下の典型パターンの問題以外は解けなくなってしまいます。

 

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面積図

 

ではどうする?おすすめの教え方

 世の中にある掛け算で算出できる例をたくさん挙げて、それを長方形の「縦」「横」「面積」に当てはめて図を描いてみましょう。このとき、個・匹・人に該当する単位は横、量に該当する単位は縦にします。

  • 1個150円のケーキを7個買ったら、合計金額は1050円になる。
  • 500mlのペットボトルを3本買ったら、合計1500mlになる。
  • 鶴が8匹いると、足の数は合計で16本になる。

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 次に、つるかめ算の逆の計算をやって、図に表します。

  • 1個150円のケーキを7個、1個120円のケーキを5個買ったら、合計金額は1650円になる。
  • 500mlのペットボトルを3本、2000mlのペットボトルを2本買ったら、合計5500mlになる。
  • 鶴が7匹、カメが5匹いると、足の数は合計で34本になる。

 

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 最後に、つるかめ算の問題にします。

 

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つるかめ算の面積図

 

 子供はすでに異なる2つの長方形のうち、左が120円のお菓子、右が150円のお菓子を表すことを理解しています。そのため、ここからは赤い線の長さを求める簡単な図形の問題になるわけです。

 

 面積図を完全に使いこなせるようになれば、こんな問題も解けるようになります。

 

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 面積図さえ描ければ、あとは図形の問題です。

 

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 ここまで書いて分かったと思いますが、つるかめ算は掛け算で求められる合計値を長方形に当てはめる習慣をつけることで、単純な四則演算では求められない答えが図形の問題として求められるようになります。

 

つるかめ算の理論

 xとy、異なる2つの2種類の合計値が与えられたとき、xかyどちらかの個数を0の極端な状態を作り、その極端な状態との差からxまたはyの値を求めるのがつるかめ算の理論です。

  1. 全部150円のお菓子なら、150×16=2400円
  2. 実際には2130円なので、2400-2130=270円少ない
  3. 150円のお菓子1個が120円のお菓子になると、合計金額は150ー120=30円少なくなる
  4. 270円少ないので、270÷30=9個が120円のお菓子の数

 

 この理論は、1回は子供に教えてあげましょう。ただ、私の経験ではこの理論を完全に理解できる子供は少ないです。

 一定以上のレベルの中学校では、典型的な形のつるかめ算がでてくるのではなく、文章問題の中につるかめ算が隠されていて、それに気が付けるかどうかを問われる問題があります。親が子供に、隠されたつるかめ算に気が付かせる何か魔法の教え方は残念ながらないです。

 文章問題の中には、解答者が気が付きやすいように、x、yの2種類の合計値が2パターンでわかりやすい形で表現されていて、慣れてくると問題作成者の心が読めるようになってきます。つまり、経験を積むしかなく、ここは親ができることは少ないです。



最後にアドバイス

 最近の学習塾で提供されるテキストは、ゲームやおとぎ話を無理やり盛り込んで、子供の興味を惹きつけるような記述方法が散見され、時代が変わったと感じます。

 筆者は、このような無理やり興味を引き付けるような記述は、一定のレベル以上の子供にとっては学習スピードを阻害するように感じています。ただ、学習塾で提供されるテキストは、何十年の時間と何百人の先生の経験を基に最適化されているため、子供が独力で理解するための最短距離となるように構成されているはずです。

 迷ったら、自己流ではなくテキストに書いてある通りに子供に説明してあげてください。ただ、学習塾のテキストは子供にとってわかりやすい記述ですが、親が教えやすいような記述になっているわけではないです。親の視点でどう教えたらいいかを知りたい場合は、このブログを参考にしていただけると幸いです。