くまのでかい足跡注意

【素数と約数を完璧にしてから進め】最大公約数の教え方

初めに

 筆者は、20代だった30年前、ある学習塾で6年間受験算数を教えてきました。その過去に教えてきた経験から、今回は中学受験を目指す子供を持つ親に向けて送る最大公約数の教え方のヒントを紹介します

 

 最大公約数を理解するためには、素数→約数→素因数分解→公約数→最大公約数、この順番で積み上げていかないと完全に理解することができません。学習塾のテキストを見ると、このような順番で構成されているため、途中でつまづくことがなければ1回の学習で完全に理解できます。

 しかし、学習塾のテキストは記載されている順番的には問題ないのですが、出題される問題は最大公約数を問うものが多く、素数・約数・素因数分解の意味を理解できないまま、最大公約数の求め方だけ覚えてしまう子供が多いように感じます。

 算数と数学は、基礎の積み重ねでより難しいことができるようになります。基礎に時間を掛けましょう。最大公約数の教え方を紹介します。

 

 

最大公約数の教え方

算数共通の解き方

 数学と算数で大きく違うのは、数式だけで学習を進める数学に対して、算数は理解の補助に「絵」をたくさん描くところにあります。どのような算数の問題であっても、親である読者の皆さんは、下の順番で解く習慣を子供に付けるようにしましょう。

  1. 絵を描く
  2. 式を書く
  3. 答えを出す

 

NGな教え方

 いきなり下の図を描いて最大公約数を求める方法だけ覚えさせると、応用問題が全く解けなくなってしまいます。

 

f:id:kuma-fishing:20220211082718p:plain

 

ではどうする?おすすめの教え方

 素数・約数・素因数分解、ここまでを完璧に理解させることに時間を掛けます。

 

素数を理解する】

 素数の見つけ方に何か法則はありません。大人である読者の皆さんも、小さい自然数から順番に素数を見つけるとき、何か特殊な考え方で見つけるわけではないはずです。

 子供と一緒に、100以下の素数を下から順番に見つけていきましょう。100以下の自然数のうち素数でない数字は、すべて1桁の素数で分解できます。つまり、100以下の素数は、2,3,5,7で割ることができないものが該当します。

 100より大きい自然数だと、143(=11×13)のように2桁以上の素数だけで構成される素数ではない自然数も登場します。しかし、2桁以上でしか分解できないような自然数は大人である我々でもすぐには思いつきませんので、無視して大丈夫です。

 

【約数を理解する】

 九九と割り算を理解している小学校4,5年生にとっては、約数はそれほど理解するのに時間が掛かりません。親と競争するゲーム感覚で、2桁以下の数字で3,4個やり取りしてみましょう。

 

24の約数を小さい整数から順番に当ててみて

1

2

4

3は?

 

素因数分解を理解する】

 2桁の自然数であっても、比較的大きい数字になると大人でもスラスラと約数を出せないと思います。そこで、素因数分解が出てきます。素因数分解では、小さい素数から順番に割り切れるかどうか確認します。

 この小さい素数ですが、2,3,5,7までで十分です。11以上の素数でしか分解できないような数値はほとんど問題として出ないと思います。

 

 素因数分解ができるようになったら、60などの比較的大きい数字の約数を素因数分解から求めてみます。

 

f:id:kuma-fishing:20220210215803p:plain


 ここで、素因数分解が終わったら、その都度子供に分解した数字を使ってその数字の約数を聞くようにしましょう。約数と素因数分解のつながりがわからないまま次に進むと、やり方だけが記憶されてしまって応用が利かなくなります。

 

【公約数を理解する】

 24,36などの2種類の数字それぞれの約数を素因数分解から求めて、約数を横に並べてみます。最後に、両方の約数に存在するものに○、その中で最大値に◎を付けましょう。

 

f:id:kuma-fishing:20220210215819p:plain



 ここは3,4問の例題を作って繰り返します。そうすると、子供は公約数は「すべての数字が割り切ることのできる数字である」という意味が理解できるようになってきます。

 ここの理解が中途半端なまま最大公約数の解き方を覚えると、最大公約数しか求めることができなくなってしまいます。

 

【最大公約数を理解する】

 最後に下の図を使った最大公約数の求め方を教えます。このとき、最大公約数だけでなく、公約数もあわせて子供に確認しましょう。

 

f:id:kuma-fishing:20220211082718p:plain

 

最大公約数の使いどころ

 普段の生活で最大公約数を必要とする場面はあまりないため、この使いどころの判断は大人でもなかなか難しいです。

 子供の日常生活や学校生活で想定される場面を例示することで、同じ数字で割りきることがどういう問題で使えるのかがわかるようになってきます。

 

f:id:kuma-fishing:20220211093807p:plain

 

最後にアドバイス

 ここまでで記載した通り、最大公約数を理解するにはその前提条件となる理論を完全に理解しておく必要があることがわかると思います。

 しかし、親が子供に教える時間が長すぎるのは良くありません。1回当たり最大でも30分程度が集中力の限界です。素数→約数→素因数分解と進める中で、子供が理解できていないと思ったら、まずは理屈はわからなくても最大公約数の求め方だけ記憶させるのも一つの手です。

 人間の理解は、ほとんどのケースでやり方を覚えて後から理屈が付いてくるものです。今日は無理そうだな、と感じたら、まずは子供に問題を解く楽しみを感じさせましょう。後日、気が付いたら子供が理屈を理解していることも少なくありません。