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【絵を描く才能を伸ばせ】立体図形の教え方

初めに

 筆者は、20代だった30年前、ある学習塾で6年間受験算数を教えてきました。その過去に教えてきた経験から、今回は中学受験を目指す子供を持つ親に向けて送る立体図形の教え方のヒントを紹介します

 

 立体図形に限らず、図形の問題は特に学力の差が出る単元と言われます。差の出る原因の一つは、視点を動かしたり、図形を切ったりくっつけたりするための想像力に個人差があることです。

 想像するのが難しければ、紙の上に描いてしまいましょう。絵を描く能力を伸ばすことで立体図形の問題を解くための学力を伸ばす方法を紹介します。なお、この記事で説明する立体は直方体までとし、円が含まれる立体は除外しています。

 

 

立体図形の教え方

算数共通の解き方

 数学と算数で大きく違うのは、数式だけで学習を進める数学に対して、算数は理解の補助に「絵」をたくさん描くところにあります。どのような算数の問題であっても、親である読者の皆さんは、下の順番で解く習慣を子供に付けるようにしましょう。

  1. 絵を描く
  2. 式を書く
  3. 答えを出す

 

NGな教え方

 直方体の体積は、縦×横×高さ、で求めることができます。しかし、見取り図を描けるようになる前に計算式を教えても、そもそもどの長さが縦・横・高さなのかわかりません。

 

ではどうする?おすすめの教え方

 立体図形の問題を解くには、見取り図と展開図が描けるようになることが重要です。これが描けるようになる前に、体積や表面積の求め方を計算できるようになっても、難解な問題になると歯が立たなくなります。

 

見取り図の教え方

 まず、見取り図を描けるようにします。子供に一番簡単な立方体の見取り図を描かせてみると、こんなことが起こります。

 

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そう

 

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うんうん

 

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えっ?

 

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・・・

 

 

 子供はなんでこんな描き方をするのでしょう?見取り図を描くとき、大人は立体を構成する面を意識するのに対して、子供は視界に入ってくる二次元の形として立体を捉えるためです。

 

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 子供に大人と同じように見取り図を描かせたければ、視界に入ってくる平面ではなく、立体を構成する面の単位で描くように説明します。また、向かい合う辺が平行になることを意識するように教えましょう。

 

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 少し難しくします。見取り図を描くときには、構成する面の中で一番特徴的なものに注目して、それを最初に描くようにしましょう。下のワンボックスカーの場合は、赤枠を最初に正面に描くと楽になります。

 

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 赤い面を正面にして描いた見取り図は以下の通り。

 

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 これだけ描ければ十分ですが、子供の理解が早ければ黄色い点が一番手前に来るような描き方も説明しましょう。

 

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展開図の教え方

 展開図については、直方体、またはそれの形が少しだけ崩れたものが描ければ十分です。それ以上複雑な面で構成された立体の展開図は、我々大人でも簡単には描けません。展開図を描くのが苦手な子供であれば、以下のポイントだけは押さえておきましょう。

  • 直角に開いた同じ長さの辺はくっつく(下の図の赤と青)
  • 直角に開いた同じ長さの辺の先端の点はくっつく(下の図の黄)

 

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 直方体の展開図が描けるようになったら、正面・真上・真横などから見た投影図が描けるようになると表面積を求めるのが容易になります。しかし、これは生まれつきのセンスと経験に因るところが大きいです。

 例を載せておきますので、子供が前後左右上下から見た時のイメージをつかむのに活用してみてください。

 

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体積の計算の教え方

 体積の基本の求め方は、縦×横×高さ、です。しかし、これだといちいち直方体を切り取らないと計算ができません。そのため、底面積×高さ、という計算でも求められることを説明しておきましょう。

 

【縦×横×高さで計算した方が簡単なケース】

 直方体の塊だけで計算できる場合は、縦×横×高さの計算で求めるのが簡単です。

 

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【底面積×高さで計算した方が簡単なケース】

 直方体で構成されていない場合は、底面積×高さで計算します。底面と上面の形が同じ「筒状」の構成になっていることが条件になります。

 

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表面積の計算の教え方

 表面積の計算は、以下のいずれの方法で求めることができます。どちらの方法もできるようにしておく必要があります。

  • 投影図で考える
  • 展開図で考える

 立体が直方体の組み合わせで構成されていている場合は、投影図で考えた方が楽に計算できます。

 

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 直方体の組み合わせであったとしても、直方体の中がくり抜いているケースなどは投影図の方法では応用できません。また、三角形や円が含まれる場合も使えません。展開図の方式であれば、すべての表面積の計算ができます。

 

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 3×4×5㎝の三角形柱を横に倒して、斜めに切った立体です。構成する面をすべて書き出して、それぞれの面積を合計します。

 

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 表面積を始めて学んだ子供には、三角形が含まれるパターンは難しいかもしれません。ただ、どのような立体でも、構成される面を描きだすように習慣づけしましょう。

 

最後にアドバイス

 図形の問題というのは、算数の中で差が付きやすい単元ですが、基本的に子供のセンスに因るところが大きく、先生や親が与えるアドバイスで急に理解が進むものではありません。

 ただ、平面図形は絵を描く能力で問題を解く能力をカバーすることは難しいですが、立体図形に関しては、絵を描く能力を上げることが問題を解く能力を上げることに直結します。つまり、立体図形は努力が反映されやすい単元と言えます。