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【あなたは間違っているかも】中学受験の算数の教え方

初めに

 筆者は、20代だった30年前、ある学習塾で6年間受験算数を教えてきました。教え子の中の1人は小学校4年生の頃から私が3年間算数を担当して、某王手学習塾の全国模試で8位を取るまで成績が上がりました。その後、その子は都内の有名女子中学校に合格しています。その他にも多数の子供に算数を教えて、私立中学に合格させることができました。


 このページを見に来てくれた読者の皆さんは、自分の子供の数か月後・数年後の受験に向けて何かヒントを探しに来たのだと思います。皆さんは、中学受験で実際に入試に出てくる算数の問題を解いたことはあるでしょうか?難関中学と言われる学校の算数の問題は確かに大人になって解いても難しいです。


 でも、ちょっと待ってください。小学生の時に感じたほど難しいと思いますか?実際に解いてみると、小学生の時よりもかなり回答できることがわかると思います。これを大学受験に当てはめるとそうはいきません。大学受験の問題は、いくら年齢を重ねても難しいです。大学受験は、人生経験ではどうしても埋めることのできない、その人の本当の頭脳レベルが問われます。つまり、大学受験とは異なり、中学受験は経験値を積めば積むほど点数が上がるものです。


 子供の成績は、9割以上は子供自身の能力で決まります。先生や親の力は微々たるものです。ただ、それでも親が正しい勉強をするための道筋を作る手伝いはすることができます。この記事では、学校の教科書にも学習塾のテキストにも載っていない、どうやったら効率よく子供に経験値を積ませて点数アップをさせることができるか、筆者自身の算数を教えた経験からそのためのヒントをお教えします。

 

 

算数を教えるときの基本パターン

 親が子供に算数を教えるときは、以下の順番を繰り返すことが大切です。

  1. 子供だけの力で問題を解いてみる
  2. 子供の理解レベルを把握する
  3. 同じ問題を子供の力だけでやってみる
  4. 少しだけ形を変えた問題をやってみる

 では、具体的に確認していきましょう。

 

子供だけの力で問題を解いてみる

 学習塾の宿題や、市販の教材を使って、まずは親は一切口を出さずに子供の力だけでやらせてみましょう。壁にぶつかったとき、自分から質問してくる子供もいれば、固まっている子供もいるでしょう。そういう時は、親である読者の皆さんの出番です。

 

子供の理解レベルを把握する(最難関だが最重要)

 子供とこんな会話をしたことはありませんか?

 

この問題この前できたじゃない?忘れちゃったの?

でもわかんないもん。

なんで1回やったことを忘れるの!!! …?X△!○…(家の外まで聞こえる声)…

 

 子供が何度も正解を出した問題なのに、別の日に同じような問題をやったらできなくなりました。子供は忘れてしまったのでしょうか?

 人間は1回できるようになったことは、勉強であろうがスポーツであろうが、急に忘れてしまうようなことはほとんどありません。特に、大人に比べて柔軟な頭を持っている子供は一度学んだことは大人になるまで覚えているものです。

 子供は忘れたわけではありません。親がどこまで子供が理解していたのかを正確に把握していないことが問題なわけです。


 次の問題を見てください。この問題は、私の娘が習っている某学習塾で出てきた問題です。

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 この問題は、まず両辺を6倍して分母をなくします。次に、左辺にxをまとめて、右辺に整数をまとめます。最後に割り算でxを求めます。

 では次の問題はどうでしょうか?

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 大人にとっては先述の問題と同じです。でも、子供はこの問題を間違えることがあります。子供は「両辺を6倍する」のではなく、「分母をなくす」と解釈している場合があるからです。つまり、x-4+2x=5、と間違えてしまうわけです。

 子供の「わかった」を親である読者の皆さんは正確に把握する必要があります。そのためには、子供が正解した問題であっても端から端まで質問してみましょう。大人が当たり前だと思っていることを、子供は意外とわかっていません。

 

 下の図は、ある立体の展開図を表しています。これの体積を求める問題があったとします。

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展開図A

 

 もしこの問題を子供ができなかった時、自分だったらどのように教えるか想像してみてください。立体の問題は、頭の中で見取り図を想像できるようになると急に解けるようになります。しかし、大部分の10歳前後の子供は見取り図を正確にイメージすることはできません。そのため、ノートに見取り図を正確に書けることは稀です。

 大人にとっては当たり前のことから順番に難易度を上げて質問してみましょう。子供であっても、小学校5年生くらいになれば自尊心があります。絶対にわかることから質問するようにしましょう。

  • 赤い線の長さは?
  • 青い線の長さは?
  • Bとくっつく点は?
  • 黄色の面積は?
  • 見取り図を描いてみて

 そうすると、どこかの質問のタイミングで子供が答えられないことが出てきます。その場合は、少しだけレベルと落としましょう。教える方は相手のレベルに合わせることができますが、教わる方は相手のレベルに合わせることができません。学習レベルを調整するのは、親である読者の皆さんです。

 

この前もやったじゃない!!

いや、違うんですよ、お母さん。その問題、子供にとっては初めてなんです。

 

同じ問題を子供の力だけでやってみる

 この「同じ問題」というのが曲者です。なぜなら、大人にとっての同じ問題が子供にとって同じとは限らないためです。例えば、前回子供が理解したと思われる問題が整数だけで構成されていて、同じだと思って親が作った問題に小数が含まれていたら、それは子供にとっては「違う問題」かもしれません。


 では、どうやって同じ問題をやらせたらいいのでしょうか?実は、ここは親である読者の皆さんはあまり悩まなくてもいいところです。子供の理解の進み方は、何十年も研究を重ねて作られた学習塾のテキストに記載されています。学習塾のテキストを大人が見ると、「なんでこんなに何回も同じ問題が出てくるの?」というくらいしつこく同じ問題が出てきます。これを活用しましょう。

 

少しだけ形を変えた問題をやってみる(大概子供はできません。でも…)

 下の図は、展開図Aを変えて少しだけ難易度を上げた問題です。

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展開図B



 展開図Aを完全に理解していれば容易に解くことができます。しかし、展開図Aが解けなかった子供は、たとえ親が十分に教えたつもりでも展開図Bが解けることは稀です。これは、どんなに教えるのが上手な先生であっても同じです。
 先生や親は道を作ることはできても、最後に理解するのは子供の力です。この時親である読者の皆さんができることは、辛抱強く繰り返しブレイクダウンして質問をしてあげることです。そうすれば、一歩ずつ着実に学力が上がってきます。

 

算数を教えるときのポイント

子供に問題を解ける楽しさを感じさせる(最難関だが最重要)

 繰り返しますが、子供の成績を決めるのは9割以上が子供の力です。それは、単純な頭脳だけではなく、努力したいという気持ちになる能力も含めて子供の力と言えます。

 では、ある日、自分の子供が翌日までの塾の宿題があるのに、夜になってもやっていなかったら、親である読者の皆さんはどうするのが良いと思いますか?一般的にこのようなケースでは、1に我慢、2に我慢、3,4も我慢、5も我慢、と言われます。

 

 また、

 

勉強しなさい!!! …?X△!○…(隣の家まで聞こえる声)…

 

 最悪ですね。

 

 我慢もせずに、勉強しなさいとも言わずに、子供に勉強させるにはどうしたらいいでしょうか?ここで必要なのは、親である読者の皆さんが、子供のその時間の学習に対する意欲レベルを把握することです。子供の意欲レベルに応じて、いっぱい褒めていっぱい手伝ってあげましょう。褒めることに対しては異論はないと思いますが、手伝うのは賛否があると思います。でも、勉強をやらないよりはましです。手伝っているうちに、子供は解ける楽しみを見つけて自分だけでやりたいと言い出すことがあります。そうなったら親の役目は終わりです。あとは、できるだけ口を出さずに子供に任せるようにしましょう。

 ちなみに、何をやっても子供が動かないこともあります。この場合は、残念ながらあきらめるしかありません。イライラせずに「明日になったらやるでしょう」くらいの気持ちの余裕が欲しいですね。

 

まずやり方を覚える、理屈を無理に叩き込まない

 中学校受験で出てくる算数で、やり方を覚えることから入る典型的な問題が「つるかめ算」です。このつるかめ算は、やり方を理解するための難易度、理屈を理解するための難易度、この二つの差が大きい問題の典型です。

 下の図は、つるかめ算を学習するときに最初に出てくる典型的な例題です。

 

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つるかめ算

 

 この問題で亀の数を算出するときの、面積図による解き方と、理屈を並べてみました。

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つるかめ算の理論





 ここで皆さんに質問です。一般的な小学校5年生が、この面積図と理屈の説明を初めて受けたとき、何割の子供が「理屈」を理解できると思いますか?

 筆者の感覚では、おそらく100人のうち3人程度です。でも、理屈はわからなくても、与えられた問題を解くことはできます。それは、面積図によるやり方を教えてもらうからです。

 

 読者の皆さんは、子供に1回は理屈を教えてあげましょう。でも、1回で理解できなかったら、あとは「待ち」です。子供はやり方を繰り返すうちに、どこかのタイミングで理屈をひらめくときが来ます。それは残念ながら受験後かもしれませんが、親が無理やり子供に理屈を理解させることはできません。自分自身の子供の頃を思い出してください。わからない理屈がわかるようになるのは、その人の経験値の積み重ねであって、他の人に理屈を繰り返し教えてもらって得るものではないはずです。

 

この記事の今後について

 今後は、中学受験で学ぶ算数の単元ごとにおすすめの教え方をゆっくりと紹介していこうと思います。また、別に釣り特化のブログもやっています。釣りに興味のある方は、よろしければそちらも訪問してください。